March 4, 2016

クジラをたべたかったネコ/カメクジラネコ作 (捕鯨の話)

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作 : カメクジラネコ
 ツイッター @kamekujiraneko
             商業作家。著書:「クジラたちの海」(評論社)
            「クジラを食べたかったネコ」(野鳥社)、他

            カメクジラネコさんは友達で、反捕鯨と海の自然や生き物を護ろうと、
       絵や物語を通じて訴え続けているアーチストである。彼のアゲンストは数多い。
               ストーリはフィクションだが、人間の愚かさや美しい海と生き物たちを
   優しい絵と言葉で語っている。
                      この物語を世界中の人々と子供達にも読んでもらいたい。

         ケイコ・オールズ

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ざ ざ ~ ん ・ ・ ・
ふなべりになみがぶつかってはくだけちります
ふねうえには 期待きたいむねをおどらせた10にんばかりのひとたちが
りだすようにして うみのほうにをこらしています
いったいかれらは 一面いちめん大海原おおうなばらなにさがしているのでしょう?
じつは このひとたちはクジラをにきたのです
クジラというのは、そう、うみんでいて
おおむかしにさかえた恐竜きょうりゅうのようにおおきな動物どうぶつです
そのクジラをにきたひとたちにまじって
ぴきのネコが ガラスだまのようなをかがやかせていました
ネコくんはふねのへさきにじんどって
ほかのだれにもけない熱心ねっしんさで うみうえをじっとつめていました
かれも ふねっているひとたちとおなじくクジラをにきたのですが
それにはちょっとしたワケがありました..




じつをいうと、ネコくんはクジラをべてみたいとおもっていたのです
かれはもともとおさかなにはがありません
なまさかなさかないたさかな缶詰かんづめさかな、みんな大好だいすきです
おまけにそうとうのいしんぼうときていますから
さかななかでいちばんおおきいといているクジラのおにく
一度いちどでいいからべたいなあと夢見ゆめみていたのです
もしクジラ1頭分とうぶんにく缶詰かんづめにしたら ひゃっコ、せんコ、いや、もっとかな?
とにかくべきれないほどのりょうになるでしょう
そしたら きっと一年中食いちねんじゅう た べほうだい
ほかのネコたちにけてあげることだってできます
人間にんげんなかには こうしてクジラをたのしむ以外いがい
クジラのにくをおいしい、おいしいといってべている人もいますが
ネコたちにはぜんぜんべさせてくれません
それなら いっそのこと じかにクジラのいるところまでってやろうと
ネコくんはふねりこむことを決心けっしんしたのです
このふね捕鯨船ほげいせんといって、以前いぜん南氷洋なんぴょうようという
とおくてさむこおりうみまで クジラをとりにいっていたということです
当時とうじ そこにはクジラがかぞえきれないほどわんさかいたそうですが
どういうわけかクジラをとることができなくなってしまい
いまではクジラ見物けんぶつにいくおきゃくせるふねになったのです



ふねのガイドさんが水中すいちゅうマイクをってきました
うみなかにたらしてクジラのうたこうというのです
ひとびとはまわりにあつまってじっとみみをすませました
 《ウォ~~ン フルルウルルル・・・ クルル・・ ウォ~~ンン》
こころをふるわせる神秘的しんぴてき歌声うたごえがスピーカーからながれでて
ふねうえひとたちはうっとりときほれました
とおくはるかな別世界べっせかい音楽おんがくのようです
ネコたちのこいうたにはかないませんが
それでも こんなうつくしいうたうたえるのなら
あじのほうもさぞかしおいしかろうと
ネコくんはおもかべるだけでよだれがてしまいました
歌声うたごえがかなりおおきかったので たぶんちかくにいるにちがいないと
ふねうえにいる全員ぜんいんりだすようにクジラをさがしはじめました
双眼鏡そうがんきょうをのぞいたり、でひさしをつくったりして
みんないっしょうけんめいです
クジラの潮吹しおふきをつけようとしているのですが
うみうえはかすみがかかっていて
ネコくんにはなかなか潮吹しおふきをわけることができません




太陽たいようひかりがギラギラとりつけて かがみのようなうみ表面ひょうめん反射はんしゃ
はりのようにほそくなったネコくんのにもいたいほどのまぶしさです
塩気しおけをふくんだかぜ毛皮けがわをべっとりさせます
ネコくんがしんぼうづようみうえをこらしていたときでした
「あ、いたぞ!」
ついにさけびごえがあがりました
ゆびのさす方角ほうがくると
くろいかたまりが水面すいめんにぽっかりとあらわれ
きりのようなしおげています
クジラは3回潮かいしおくと、うみなかにもぐってしまいました
船長せんちょうさんがふねのエンジンをめます
しばらくするとまたかびがってきました
どうやら3とうか4とうれをつくっているようです
そのうちの1とうが いきなりうみからのびがりました
クジラは全身ぜんしん半分以上はんぶんいじょううみなかからとびだして
からだをひねるようにかたむけると 水面すいめんにたたきつけました
“ ド ド ー ン ”
水柱みずばしら高々たかだかがり、ふねうえにまでおとがとどきます
クジラたちは次々つぎつぎきそいあうように ちゅうにおどりあがりました
見物客けんぶつきゃく歓声かんせいをあげ、こどもみたいにはしゃいでいます



ふたたびエンジンがかかり、追跡ついせきがはじまりました
ふねはほとんどびはねるようにしながら うみの上をつきすすみました
くちをしっかりじていないと 大事だいじしたをかみそうです
こちらのうごきにづいたのか、クジラたちも場所ばしょうつりはじめました
ジャンプをしながらどんどんとおざかっています
そのとき、横合よこあいからおおきななみしよせ
ふなべりをこえて ネコくんにおそいかかりました
あっというまもなく ネコくんはなみにさらわれて
みずなかにジャボンとっこちてしまいました
さあ、たいへんです
つぎ瞬間しゅんかん、ネコくんはうえしたもわきたつようなあわかこまれていました
ゴーゴーとそうぞうしいおとであたりはいっぱいです
みみはなからしょっぱいみずはいりこんできます
「たすけて、おぼれちゃう!」
こえをあげようとしたネコくんは、海水かいすいいこんでむせかえりました
ほんあしをバタバタさせて ひっしに空気くうきをもとめますが
こわさと息苦いきぐるしさとで、むねがしめつけられます
ネコくんはしだいにとおくなってきました
もがくのをやめると あたりはしずまり、青一色あおいっしょくになっていきました
ネコくんは 自分じぶんもまっさおにそまっていくようにかんじました..



ネコくんはあおうみなかをただよっていました
ふしぎなことに、さきほどまでの息苦いきぐるしさはまったくありません
手足てあしうごかそうとしましたが 手足てあしはなく
かわりにさかなのようなヒレがついていました
でも、みずなかではこのほうが便利べんりです
ネコくんは自分じぶんまれたときからずっと
このあお世界せかいになじんでいたようなになりました
ほんあし地面じめんうえあるいていたなんて まるでウソみたいです
ここは平和へいわですごしやすい世界せかいでした
太陽たいようそらにかかった円盤えんばんではなく、ユラユラうごめくひかり万華鏡まんげきょうです
ネコくんはとても満ち足み たりたしあわせな気分きぶんでした
ふいに あたまの上にくらいかげがさしました
うえから水音みずおととともにくろいものがとびこんできて
かれのまわりにひろがりました
それはさかなをとるあみでした
かれのからだはそのあみにからみとられ、身動みうごきがとれなくなりました
もがけばもがくほど あみはまきついてからだいこみます
ネコくんはそのままズルズルとげられながら
ひっしになってさけびました
「たすけて、おぼれちゃう───」


うっすらとひらくと、太陽たいよう正面しょうめんでかがやいていました
ネコくんは空気くうきなかにいましたが、どうやらちゃんといきえるようです
心臓しんぞうもたしかにうごいています
かれはまだくらくらするあたまこして、あたりをまわしました
どちらをいてもあおうみがはてしなくつづいています
ネコくんはやっと 自分じぶんがどうしてここにいるのかをおもいだしました
そうだ、ぼくはクジラをにきて、ふねからっこちちゃったんだっけ
どこかのはなれ小島こじまにでもながれついたのでしょうか?
それにしてはどうも様子ようすがへんです
かれのしたくろくてなめらかな地面じめんは なんだか上下じょうげにゆれているのです
“ ブ シ ュ ー ッ ”
突然とつぜんちかくにネコくんのからだがすっぽりはいれそうな2つのあなひらいて
そこからしろみずけむりが噴水ふんすいのようにがりました
なまぐさいにおいがたちこめ、ネコくんのはなをつきます
ほんのつかのま、そらにちっちゃなにじがかかりました
「やあ、おざめかい?」
こえはネコくんの四方しほうからこえてきたようでした
かれはキョロキョロとあたりをまわしましたが、だれの姿すがたえません
「ここだよ、ここ。きみのあししたさ」
ネコくんはおそるおそるうみのそばにはいよりました



「わっ!」
おおきな目玉めだまが うみなかからこちらを上目うわめづかいにつめています
そうです、かれはなんとクジラの背中せなかうえっていたのです
ふねからではどのくらいのおおきさか見当けんとうがつきませんでしたが
いざこうしてうえってみると、なんというとてつもないおおきさでしょう
「うひゃあ、これじゃ缶詰かんづめせんコでもりないや!」
うっかりくちにしてから、ネコくんはしまったとおもってあわててくちをつぐみました
自分じぶんのようにちっぽけなネコなど
クジラさんはきっとひとのみにしてしまうにちがいありません
はずかしさをまぎらすために
かれはしょっぱいのもかまわず 背中せなかをせっせとなめました
クジラさんがわらってからだをゆすったため、あししたがゆれうごきました
「あのぉ、あなたがぼくをたすけてくれたんですか?」
ネコくんはこわごわとクジラさんにたずねました
「ぼくはなにもしちゃいないよ
 きみが波間なみまをただよってきたので、ひょいと背中せなかっけたまでさ
 残念ざんねんながら、いまのぼくにはきみをたすけるちからはなくてね
 きみのうんがよかったんだ
 たぶん ネコのかみさまがまもってくれたんだろう」
そういえば、クジラさんのこえにはなんだか元気げんきがないようです




「どこかぐあいでもわるいんですか?」
あみにからまってしまってうごけないんだ」
ネコくんはクジラさんのはなすじをつたいながら
コブのあるあたまのいちばんまえのほうへあるいていきました
ると、たしかにところどころやぶれかけたあみ
あたまさきからむなビレにかけて びっしりとからみついています
「なんとかぬけだそうとしたんだがね
 よけいがんじがらめになって身動みうごきもできなくなってしまった
 ヒレはきずつくし、およちからもない
 こうして波間なみまをただようにまかせて もう10日とおかほどになる」
10日とおかも!? その間食あいだたべものはどうしたんですか?」
「ぼくらはなつあいだにたくさんべてからだなかにたくわえるんでね
 いまはべなくても平気へいきなんだ」
とにかくいのちをすくってもらったことですし
ネコくんはなんとかしてクジラさんを自由じゆうにしてあげたいとおもいました
そこで あみをかみちぎろうとしてくちにくわえてっぱりました
きばのするどさには自信じしんのあるネコくんでしたが
このあみはどうしてもかみることができず
しまいにはとうとうぐきがいたくなってしまいました
「むりだよ、人間にんげんつくったあみは ぼくらのちからじゃどうにもならない」




クジラさんをたすけるのをあきらめてすることがなくなり
どこまでもうねるなみばかりながめているのにもあきてきたネコくんは
たいくつになってクジラさんにたずねました
「ねえ、クジラさんはいつもうみなかでどんなふうにらしているんだい?
 りくにはやまかわもりがあって、いろんなきものもんでいるけど」
「ハハ、ぼくはうみからたことはないからりくのことはよくらないが
 うみなかだってりくうえけないくらいおもしろいとおもうね
 たとえば、うみにはかわはないけれど 海流かいりゅうといって
 あたたかいみずつめたいみずはこながれがまったところをとおっている
 それから、もりはやしのかわりにサンゴのもり海藻かいそうはやしがある
 そこにはとてもたくさんのきものがんでいるよ
 スイスイとおよぐもの、プカプカとかぶもの
 うみそこをノソノソとはうもの、じっとしてぜんぜんうごかないもの
 ぼくのようにおおきいのから えないほどちいさいの
 うつくしいかざりやもようのついたもの、どくつもの
 おおぜいれてらすもの、ひとりでいたがるもの
 どうもうなもの、いつもげまわっているもの・・・というぐあいにね
 それから、うみなかはさまざまなおとちている
 ぼくらクジラはこえ仲間なかまどうしの連絡れんらくをとりあっているんだ」
なるほど、いったんもぐればうみはおもしろい素顔すがおせてくれるようです
でも、ネコくんはさっきみたいなぬれネズミになるのはごめんだとおもいました



「ぼくらクジラの仲間なかま
 毎年まいねん 季節きせつがくると きたうみみなみうみあいだたびするんだ
 ちょうどわたどりうみうえ大陸たいりくから大陸たいりくへとわたっていくようにね
 なつきたうみには ちいさなさかなやエビの仲間なかまがたくさんあつまってくる
 それをべるために ぼくらははるばるきた
 そして ふゆがおとずれると
 あたたかいみなみうみ移動いどうして こどもをそだてるんだ」
クジラさんはむかしをおもいだしながら
ひとことひとことかみしめるようにネコくんにはなしてかせました
「たまにははみだしものがいて
 められたコースをはずれてよそのうみをたずねたりもする
 ぼくもこんなふうにならなけりゃ
 まだ一度いちどたことのないうみきたかったんだけど…」
そういってクジラさんは すこかなしそうなかおをしましたが
をとりなおしてさきをつづけました
「ぼくらの一族いちぞく岸辺きしべちかいところをおよいでいくんだ
 ときどきのびがってりく地形ちけいおぼえておくと
 かえみちのときに便利べんりなんでね」




「おや、おもしろいきものがやってきたよ」
ネコくんがうみうえをやりますと
おおきなむなビレをつばさのようにひろげたさかな
なみのいただきからいただきへと次々つぎつぎびだしてはえていきます
さかなんでるっ!」
「あれはトビウオというんだよ」
「へえ、さかなのくせにとりのまねをするのがいるなんてらなかったなあ」
「まあ、ぼくらだってけもののくせに年中泳ねんじゅうおよいでいるんだから
 おおきなことはいえないがね」
「ええ~~っ、クジラさんはさかなじゃなくてけものの仲間なかまだったんですか!?」
クジラさんのことばにネコくんはびっくりしました
そういえば、さっきから10ぷんおきくらいにいているしおは クジラさんのいき
2つのおおきなあなはなだったのです
てっきりクジラさんのことを おおきなさかなだとしんじこんでいたネコくんは
またもやはずかしいおもいをして 毛皮けがわの中にかおをうずめました
「きみたちのとおいしんせきにあたるぼくらのご先祖せんぞ
 ずっとずっとむかしにりくをはなれてうみなからすことにめたんだ
 よっぽどさかな好物こうぶつだったんだねぇ、ハハハ」
意外いがいちか間柄あいだがらだといて
ネコくんはもっとクジラさんのことをりたくなりました
おたがいお魚好さかなずきということもありますし..



「クジラさんはうたうたったり、ジャンプをしたりするクジラの仲間なかまですか?」
「ああ、そうだよ
 “いちばんのうたでジャンプの名手めいしゅ”のクジラさ
 人間にんげんたちはザトウクジラとんでいるようだが」
「クジラさんはどうしてそんなおもたそうなからだ
 うみうえびはねるんですか?」
ネコくんは クジラさんのジャンプをそのたときから
ふしぎにおもっていたのです
しまほどもありそうなからだを、あんなにたか水中すいちゅうからげるなんて
よっぽどほねれることではないでしょうか?
おと仲間なかま合図あいずおくったりするのにも使つかうんだけど
 まあとにかく、そらかってぐうんとのびして
 みずからだをたたきつけるのは、とっても気持きもちがいいもんだよ
 仲間なかまなかでだれがいちばんたかくジャンプできるか
 何回なんかいつづけてべるか競争きょうそうするんだ
 あの最高さいこう気分きぶんは、ちょっときみたちにはわからないかなあ」
あれがあそびだなんて!
ネコくんがむしいかけたり
くさにじゃれついたりするのとはわけがちがいます
やっぱりクジラさんはなにをするのもスケールがでっかいようです




「よくぼくらのジャンプやうたのことをっていたね」
「さっきクジラさんをにきたひとたちといっしょに
 ふねうえから見物けんぶつしていたんです」
「そうか・・・・」
人間にんげんといっしょだったといて、クジラさんのかおがくもりました
こえ調子ちょうしでそれにづいたネコくんは
いそいでクジラさんのうたをほめあげました
「そうそう、うたきましたよ
 とってもすてきなこえですね、ぼく感動かんどうしちゃった」
感動かんどうしたのはほんとうでしたが
ネコくんのおせじにクジラさんはまんざらでもないようです
「ありがとう
 ぼくらのうたはどういうときにうたうかによって
 いろいろなメロディーがあるんだ
 ライバルとのけっとうでの前口上まえこうじょうとか
 こいするメスにささげるセレナーデ
 さかなをとりにかけるときに大漁たいりょういのうたとかね
 たたかいやあいうた場合ばあいは、うたがうまいほうが有利ゆうりなんだよ」
うたでけんかのけや こい相手あいてめるなんて
クジラさんたちってなかなかユニークだなあ
ネコくんはすっかり感心かんしんしました




りょうかけるといったけど
 クジラさんたちはどうやってさかなをとるんですか?」
あみ使つかうのさ」
あみ? あみってこのあみのこと?」
ネコくんはクジラさんのあたまにからみついているあみをさしました
クジラさんのはヒレのかたちになっていて
とてもこんなあみつくれるほど器用きようにはえません
「ぼくらはこんなあぶないものは使つかわないよ
 ぼくらのあみは、クジラのかみさまからさずかった天然てんねんあみ
 まず、さかなれをつける
 ぼくらがごはんにしているのは、ニシンとかイワシとかの小魚こざかなだけどね
 そしたら、したにもぐってはなからいきをはきすんだ
 すると、ブクブクとあわがたちのぼって空気くうきでできたあみになる
 さかなれのしたを えんをえがくようにおよぎながら
 そのあわあみさかなかこんじゃうんだ
 さかなたちがあわにおどろいてあつまったところを、ガブッとひとのみさ」
へえ、クジラさんはずいぶん便利べんり道具どうぐっているなあ
いているうちに、ネコくんはだんだんおさかなべたくなってきました
“ グ ~ ”
「アハハハ、ネコくんは想像力そうぞうりょくがあるねえ」




「おはなしいていたらおなかがペコペコになっちゃった」
ふねまえにきちんとべておけばよかったと ネコくんはくやみましたが
いまとなってはあとまつりです
うみうえにはべられそうなものもないし
さっきのトビウオでもつかまえておけばよかったのですが
「どれ、ちょっとうみなかをのぞいてごらん」
一度いちどっこちてひどいにあったので
できればたくもなかったのですが
クジラさんがせっかくむなビレをげてくれたので
うえっかって水面すいめんをのぞきました
するとどうでしょう
こんなうみのまんなかなのに、大小だいしょうさまざまなさかな
ネコくんのまえをひるがえしていくではありませんか
さかなたちはぼくみたいなおおきいのにくっつきたがるんだ
 流木りゅうぼくなんかにもよくあつまっているよ
 そのほうがてきからまもりやすいからね
 ぼくたちきものはけっしてべる、べられるだけの関係かんけいじゃないのさ」




さかなはもうとどきそうなところをツイと横切よこぎっていきます
ネコくんはのどからるほどさかながほしかったのですが
いかんせん とる方法ほうほうがありません
「ネコのかみさまにいてみたまえ」
クジラさんにそういわれて、ネコくんはじっとあたまをはたらかせました
しばらくしてから、突然とつぜんアイディアがパッとひらめきました
「よし、クジラさんがあみならぼくはりでいくぞ!」
ネコくんはヒレのふちぎりぎりのところにって
うみのほうへおしりをけると、しっぽを水面すいめんにたらしました
ネコのおかあさんがこどもをじゃらすときのやりかた
しっぽのさきをピクッピクッとうごかし
さかながえさだとおもいこむようにせかけます
いままでこんなふうにえものをとったことはありませんでしたが
ものはためしです
まもなく、びんかんなしっぽのさきさかながパクッといつくごたえがありました
ネコくんがすかさずしっぽをふりげますと
なかくらいのおさかなが1ぴきぶらがっていました
きょうのおかずにはこれで十分じゅうぶんです
「やったあ!」
「おみごと、ネコくん」




ものをべられないクジラさんのうえ自分じぶんだけごちそうにあずかるのは
ネコくんはなんとなくわるがしましたが
クジラさんがえんりょはいらないというので
ありがたくちょうだいすることにしました
「クジラさんはどうしてちっちゃなさかなしかべないんですか?
 そんなにおおきなくちなら
 ぼくよりもっとでっかいさかなでもべられそうなのに」
なかがいっぱいになったネコくんは、またクジラさんに質問しつもんしました
「ぼくらのくちの中にはえているヒゲはね
 ちょうど海水かいすいから小魚こざかなをこしとってべるのにつごうよくできているんだ
 クジラのかみさまがそういうふうにめたのさ」
ネコくんはときどきマグロやカツオの缶詰かんづめべます
それなのに、クジラさんはまわりにさかながいっぱいおよいでいても
なつ以外いがい季節きせつ見向みむきもせず
おおきな図体ずうたい似合にあわないちいさなさかなやエビばかりべているなんてふしぎです
「・・・ぼくが人間にんげんふねにいたといったら
 クジラさんはおもしろくなさそうだったけど
 やっぱり人間にんげんはきらいですか?」
「うーん・・・」
クジラさんはむずかしそうなかおをしてうなってしまいました



クジラさんがあみにからまってうごけないでいることも
かれが人間にんげんをこころよくおもわない理由りゆうのひとつかもしれません
しかし、なんといっても 人間にんげんはクジラのてきでもあるのです
こんなにおおきくて うたったりんだりいろんなことができる
物知ものしりのクジラさんでさえ
人間にんげんにはとてもかないません
「でもね、べられることがいやだというんじゃないよ
 ぼくらだって、ちいさいうちやとしをとったり病気びょうきになったりすると
 サメやシャチにねらわれるからね
 シャチというのはぼくらのしんせきで
 “どうもうでかしこいうみのかりうど”のクジラとばれている
 からだはぼくらよりちいさいけど
 仲間なかまどうしで協力きょうりょくしてりをして、えものをけあうんだ
 かれらはおそれられているけれど、尊敬そんけいされてもいる
 ぼくらをみんなほろぼしてしまうようなことはしないからね」
「ふうん、うみおうさまみたいなクジラさんにも苦手にがててきがいるんだ」
「ぼくらはべつに、ぼくらがべているさかなたちよりちっともえらくはないよ
 どれか1種類しゅるいだけがさかえすぎて、みんなが迷惑めいわくすることのないように
 かみさまはとりはからっているからね
 たとえば、ぼくらはたしかにてきすくなないけど
 そのかわりまれるこどものかずもとてもすくなない」



「ぼくらはみんな自分じぶんにそなわった道具どうぐ使つかって
 おやおそわったり、まれつきっている方法ほうほうでえものをとる
 えものをとるのも、みかをさがすのも、まもるのも全部自前ぜんぶじまえ
 シャチだって、するどいまえのスピードでりをする
 てんからさずかった自分じぶんちからをわきまえているんだ
 ところが人間にんげんは、ぼくらのようなおおきな動物どうぶつをかんたんにつかまえられる
 このあみふねのような道具どうぐ使つかってね
 こういうあみは、ちぎれてながされたり、漁師りょうしてたりしたものだ
 あみがあんまりほそくてえにくいものだから
 ぼくはおよいでいるうちに うっかりあたまをつっこんでしまった
 ぼくらのあみ空気くうきあみですぐにえてしまうけど
 人間にんげんが作ったあみは どうしたわけか自然しぜんちからでくさったりこわれたりしない
 おばけみたいにさまよいながら きものたちをころすおそろしいわなになる
 ぼくらクジラやイルカの仲間なかま以外いがいにも
 おおくのさかなたち、海鳥うみどりやウミガメ、アザラシたちがこのわなにはまってしまう
 ぼくぐらいのとしならまだしも、こどもたちのことをおもうとむねいたむよ
 しょっちゅういきいに海面かいめんがるから あみにかかりやすいし
 体力たいりょくがないからすぐによわってしまう」
そういったクジラさんのはとてもかなしそうでした..




「どうして人間にんげん道具どうぐはぼくらのとちがうんだろう・・?」
「さあ、よくわからないが、自然しぜんにはないちから使つかっているようだ
 ずっとみなみにクジラがたくさんんでいるこおりうみがあるんだが──」
「あ、それ 南氷洋なんぴょうようっていうんでしょ?」
「そうそう、よくっているね
 ぼくらはそこでながあいだ平和へいわにすごしてきたんだけど
 あるとしから突然とつぜん大きなふねがやってきて
 えたいのれない方法ほうほうでぼくらクジラをさらっていくようになった
 やがて、ぼくら“うた”の一族いちぞくやほかのおおきなクジラたちは
 仲間なかまをおおぜいころされて ゆたかなこおりうみから姿すがたしていった
 いまじゃ“いちばんのチビですばしこいクジラ”が
 みんなにかわってうみのおつとめをはたすのにてんてこまいさ
 というのも、皮肉ひにくなことにかれらはからだちいさくてにくすくなかったから
 おおきいクジラがすっかりいなくなるまで見向みむきもされなかったんだ
 チビといったって ぼくよりふたまわりほどちいさいだけなんだけどね
 でも、そのチビクジラがいま人間にんげんにねらわれている
 かれらのにもしものことがあったら クジラの楽園らくえんもおしまいだよ
 そこにはペンギンやオットセイやほかにもいろんなきものがいて
 うみかみさまがそれぞれの役目やくめをわりふっているから
 クジラのやくがだれもいなくなっちゃうと かみさまもきっと大弱おおよわりだろう」



これでネコくんにも、まちでクジラのにくられているのを
かけなくなったわけがわかりました
人間にんげんたちはもちろん
 自分じぶんでそんなとおくまでおよいでいくことはできないから
 石油せきゆという“える水”でふねうごかすらしい
 それはおおむかしのきもののしかばねがうみそこにつもって
 とおくなるような年月ねんげつをかけてできたものなんだがね
 人間にんげんはそれを地面じめんしたからどんどんくみしている
 どんな使つかみちがあるのからないけれど
 ふねだけじゃなくてりくうえでもたくさん使つかっているんだろう
 ところが、その石油せきゆはこぶためのタンカーというおおきなふね
 あちこちのうみ事故じここしてそいつをこぼしている
 これがまた迷惑千万めいわくせんばんなんだ
 なにしろ、ぼくらはヒゲがねばついてえさがとれないし
 海鳥うみどりたちもはねがベタベタになってべなくなるし
 づくろいをすれば、今度こんど石油せきゆをのみこんでおなかをこわしてんでしまう
 アザラシやラッコは毛皮けがわがだいなしになってこごえてしまうし
 さかなたちもいきができなくなって水底みずそこにおおぜいよこたえる
 さかながいなくなっちゃったら それをべているたくさんの動物どうぶつこまるわけだ」



「それから河口かわぐち岸辺きしべちかづくと、やたらにへんなものがながれてくるね
 よくしろくてフワフワしたものが海面かいめんかんでいるんだが
 ウミガメとかがクラゲとまちがえてべちゃって ひどいにあっているよ」
それをいて、ネコくんはハッとおもいあたりました
あれ? それってもしかすると
いえの人がスーパーへ買物かいものってもらってくるビニールぶくろのことかしら・・・
「そもそもうみ水自体みずじたい人間にんげんなが毒水どくみずのせいでおかしくなっている
 かれらがつくりだすどくは きもののからだなかにたまりやすい
 ちいさなちいさなきものを それよりすこおおきなきものが
 それをもっとおおきなきものがべ・・・とくりかえすうちに
 どんどんどくがたまってつよくなっていくんだ
 だから、ぼくらみたいにさかなべているおおきな動物どうぶつはいちばんこま
 おまけに、そうしたどくはなかなかえずに
 こどもやまごたちのからだまでむしばんでいく
 ちかごろ わけのわからない病気びょうきにかかる仲間なかまおおいのはそのせいかな
 ぼくをべるときはおなかはやめておいたほうが安全あんぜんだよ、ハハ」
もう、クジラさんたらいじわるなんだから
でも、わらいごとではありません
まじめなかおにもどってクジラさんはいいました
人間にんげんたちはまるでうみをゴミだとでもかんがえているみたいだね・・・」



ネコくんはすっかりかんがえこんでしまいました
ネコくんにとっての人間にんげんとは
あたたかくていこごちのよいおうちや
おいしいごはんをくれる便利べんり存在そんざいでした
もちろん、人間にんげんにたよらずにきていくこともできますが
それには苦労くろうしてえものをさがさなくてはいけないし
いつもおなかいっぱいべられるともかぎりません
雨風あめかぜさむさにたえなくてはならず、らくちんならしはのぞめません
人間にんげんがネコくんとちがうのは
そういう快適かいてき生活せいかつ自分じぶんたちでれたてんです
自然しぜん姿すがたおもいのままにつくりかえ、おおきなまちつく
いろいろな機械きかいりものを発明はつめいしました
たしかに、うみ王者おうじゃでありながら
ちっともいばったりしないクジラさんとはちがって
おうさまどりのところはありますけど
そのかしこい人間にんげんたちが、どうしてうみきものたちにたいして
そんなひどいことをするのか
ネコくんにはさっぱりわかりません
クジラさんも理由りゆうをはかりかねている様子ようすです..




自分じぶんたちだって とりすぎたりうみをよごしたりして
 さかながいなくなっちゃうとこまるとおもうんだけどねぇ・・
 ぼくらやさかなべつくしてもりないほど人間にんげんおおいのかな?」
なるほど、りくうえではやまがけずられ、もりはやしもきりはらわれて
いえやビルがどんどんちならんでいきます
人間にんげんかずがあまりにふえすぎたせいなのでしょうか?
それにしても、りくでもうみでも人間にんげんのふるまいは少々目しょうしょうめにあまるようです
「やっぱりほかのきもののことにももうすこくばってほしいよね
 きたみなみうみ行き来い きするたびのとちゅう海岸かいがんをやると
 としごとに様子ようすわっていくのがわかるんだ
 干潟ひがた磯浜いそはま埋立うめたてられて、きれいなうみはどんどんせばまっていく
 きしちかくはさかなちいさなきものがたまごやこどもの時期じきをすごす場所ばしょだから
 おききものにとってもすごく大事だいじなところなんだ
 ぼくらだって子育こそだてに使つかっていたんだけど
 だんだんいたてられてくあてがなくなってきた
 うみりくとはってもれないえんにあるんだよ
 そもそも地球ちきゅうでいちばん最初さいしょ生命せいめいまれたのはうみなんだ
 ぼくらはいったんりくがってから またうみにもどったので
 その大切たいせつさがよくわかるんだけどね
 人間にんげんだってらないはずはないんだがなぁ・・・」



「ときどきぼくらはへんなふねにでくわすことがある
 それはうみなかにずっともぐりっぱなしでいるふねでね
 気味きみわるいスクリューのうなりをひびかせて
 うたぐりぶかそうにとおりすぎていくのを何度なんどたよ
 そのふね仲間なかまどうしでころしあいをしているっていううわさをいた
 おおきさやかたちているせいでてきとまちがえられたのか
 まきぞえにころされたクジラ仲間なかまもいる
 おなじようなふねが うみそこ立往生たちおうじょうしちゃうことがあるんだけど
 そうすると、ふねのまわりにはのかげがたちこめて
 どんなきものもちかよることができなくなるんだ・・」
ネコくんはテレビで戦争せんそう場面ばめんおもこしました
それはきっと潜水艦せんすいかんというふねにちがいありません
たくさんのつみのないきものたちをまきこむ戦争せんそう
ネコくんにもクジラさんにもさっぱり理解りかいできないことのひとつです
クジラさんなんて、けんかをなるべくさけるために
歌比うたくらべですませているというのに
人間にんげんってつくづくおかしな動物どうぶつだなあ..




クジラさんのこえはだいぶよわまってきたようです
「ああ、もうそろそろおわかれになりそうだ
 これが運命うんめいならしかたがない、クジラのかみさまがめたことだからね
 こんなあみにからまってぬのはちょっぴりしゃくだけど・・」
ネコくんはそれをいてかなしくなってきました
ここでクジラさんがんだら
ネコくんもうみのまんなかでおぼれんでしまうでしょう
ネコくんのから大粒おおつぶなみだがあふれだし、ほおヒゲのあいだをポロポロとつたいました
「おやおや、そんなにいたらからだから水分すいぶんがなくなって日干ひぼしになってしまうよ」
ネコくんはすこ笑顔えがおをとりもどしてきました
「クジラさんはかなしいときにはかないの?」
「ぼくらはみずなかんでいるからなみだないね」
「そうか」
「まあ、心配しんぱいしなさんな
 ぼくがきしまでれていってあげるよ」
そういうと、クジラさんは最後さいごちからをふりしぼってビレをぐんとひとうちしました
ネコくんはふりとされないようにコブにしっかりしがみつきました
まわりのみずがうずをまいて、しろあわをのみこんでいきます
クジラさんはかすかにえる陸地りくち方角ほうがくからだきをえました
「さあ、あとはしおながれにまかせておけば、なみきしまではこんでくれるよ」
あたりはもうまっくらで、うみそらとのさかいめもわからないほどです
ただ前方ぜんぽうにチラチラとえるまちあかりが、さきをしっかりとしめしていました




「ネコくんはりくのけものなんだから
 ぬときもやっぱりおかのうえでなきゃおかしいものね」
クジラさんは弱々よわよわしいこえわらいました
「クジラさんはりくうえんでもいいんですか?」
「ああ、うみのそばからはなれるのでなければね
 んだクジラが浜辺はまべげられるのはめずらしいことじゃない
 むかし、人間にんげんがまだ自然しぜんにはないちからたなかったころ
 はまんだクジラをつけると、みんなでおまつりをして
 人間にんげんかみさま、クジラのかみさま、うみかみさまに
 感謝かんしゃ気持きもちをこめていのったものだ
 そして、ぼくたちのご先祖せんぞにく
 大切たいせつべものとしてむらのみんなにくばられ
 ほねあぶらひとびとのためにいろいろとやくに立った..」
クジラさんはそれきりだまりこんでしまいました
あんまりながくクジラさんがおしだまっているので
ネコくんはクジラさんがほんとうにんでしまったのかとおも
心配しんぱいになってたずねました
「クジラさ・・ん?」



すると、クジラさんはおもむろにくちひらきました
いままでの疑問ぎもんがふいにけてこたえがつかったかのように
おもうに・・・
 おもうに、いまの人間にんげんたちは てんからさずかった
 きものとしての自分じぶんたちにふさわしいちからあたえられた役目やくめ
 満足まんぞくできなくなって、よりおおくをもとめるようになった
 もっとひろくて快適かいてきみか
 もっとおおくの、いままでくちにすることのなかったべもの
 それらをもっとらくにたくさんれる方法ほうほう・・・
 そうやって自分じぶんたちのことばかりかんがえて自然しぜんくわえていくうちに
 自分じぶんたちのかみさまが ぼくらクジラをはじめ
 とりやけものやさかなむしくさや、そのほかさまざまなきものたち
 そして、うみそらやまかわや、ぼくらをとりまくすべてのものをつかさどる
 ほかのかみさまとおたがいに相談そうだんしあい、取り決と きめをして
 このうつくしいけどこわれやすいほしのバランスを
 うまくたもつようにしているってことを わすれちゃったんじゃないかな?
 人間にんげんたちが自分じぶんのことをしんじなくなったものだから
 人間にんげんかみさまはたぶん、かれらをはなして
 どこかへかくれちゃったのかもしれない・・・」
ネコくんはクジラさんのはなしにじっとみみをかたむけます



「ぼくは自分じぶんべられてもかまわない
 それでほかのきものがきていけるんなら
 よろこんでこのをささげよう
 どんなきものだってそうしているんだもの
 そこで、きみにひとつおねがいがあるんだ
 もし、ぶじにりくにたどりついたなら
 ぼくのにくをひとくちべてくれたまえ
 そうすれば、ぼくはむだにんだんじゃなくて
 ぼくのよくっているともだちをかすのに
 役立やくだったことになるのだからね
 こんなにうれしいことはないよ」
ネコくんはそれをいておどろきました
せっかくこうしてり合って なかよしになったともだちを
んだからといってべてしまうなんてことが
どうしてできるでしょう?
たしかにまえまでは クジラのにくべてみたいとおもっていましたけど
しかし、クジラさんは本気ほんきでいっているようでした




つめたいよる潮風しおかぜに、ネコくんはこごえて毛皮けがわをふくらませました
「つかれたらおやすみ
 ぼくが子守歌こもりうたうたってあげよう
 クジラのはたいていひとりっだから、みんなあまえんぼうなんだ
 おかあさんクジラは1ねんくらいあかちゃんクジラにおちちをのませ
 うみきていくために必要ひつよう知恵ちえをいろいろとおしえる
 ぼくたちクジラはおおきくなるまでに何年なんねんもかかるから、なかなかかずがふえない
 だから、おかあさんクジラはこどもをとても大事だいじ大事だいじそだてるんだ
 そして、こどもをねかしつけるときにはうたうたってあやしたのさ
 おかあさんほどうまくはないけど、うたはいまでもしっかりおぼえている・・・
 ウォ~~ン・・キュルルクルゥ~・・・」
ネコくんはからだをまるくしてよこになりました
こうしてからだをぴったりくっつけていると
クジラさんの心臓しんぞうなみのように規則正きそくただしいリズムでっているのがこえます
そういえば、ネコくんもちいさいころおかあさんに子守歌こもりうたうたってもらったものでした
クジラさんの心臓しんぞうおとはネコくんたちにくらべてずっとゆったりしていますが
ネコくんはまるでおかあさんにかれているときのようにくつろいだ気分きぶんでした
うみうえほしはよごれた空気くうきにじゃまされることなく
赤白黄色あかしろきいろひかりきそいあっています
かがみのようにないだうみおもて
いくつかのあかるいおおきなほし自分じぶん姿すがたうつしています
ふたつのなみ伴奏ばんそうで クジラさんのしずかな子守歌こもりうたきながら
ネコくんはいつしかうみのようにふかねむりにちていきました





おやすみ、
やんちゃなクジラくん
きょうは1にちどんなことが
あった?

銀色ぎんいろひかさかなたちのれに
あたまをつっこんだり
おひさまにかっておもいきり
ジャンプしたり
ウミガメのおじさんを
からかったり
カツオとならんでおよくらべしたり
ひょうきんもののイルカと
ふざけっこしたり

うみそこいろとりどりの
きものたちをながめて
うっとりしたり・・・

ちっちゃなエビたちがパチパチとハサミをらすおと
岸辺きしべちよせるなみのどこか
なつかしいひびき
さかなたちのかすかなさえずり

はぐれクジラのこどくなつぶやき
あっちこっちのクジラ仲間なかま
ままなおしゃべり
うみのはるかなふかみから
とどろいてくる
ぶきみなごえ・・・

うみおおきな、おおきな宝箱たからばこ
たのしいこと、おもしろいこと、
うつくしいことであふれてる
ときにはちょっぴり
こわいにもあうけど
おそれずにみみをすませてごらん

ほら、すてきなふしぎたちが
んでいるよ
きるってやっぱり
すばらしいこと
このはてしない世界せかい全部ぜんぶ
きみのもの
あせらなくたってげやしない
いつだってきみをっている

いつだってきみのそばにいる
だから
きょうはおやすみ
たのしみはあしたにとっておいで

おやすみ、ちっちゃくておっきな
わたしのやんちゃなクジラくん
まれながらの冒険家ぼうけんかくん・・・



ズズズ・・・
なにかがこすれるおとがして、ネコくんはましました
かれはあいかわらずクジラさんのくろ背中せなかうえっていましたが
まわりにはどこまでものたうつなみのかわりに
しろ砂浜すなはまがまっすぐのびていました
そらはうっすらとあかみがかり、ちかいことをつげています
「クジラさん、りくについたよ
 ありがとう、おかげでたすかりました」
しかし、クジラさんは返事へんじをしませんでした
いくらゆすっても(ネコくんのちからではピクリともしませんでしたが)
さけんでも
クジラさんのくろからだいわのようにじっとしたままうごきません
かれはもうクジラであることをやめていたのです
もう二度にどいきもしなければ
力強ちからづよおよぎをせることも、うつくしいうたくちずさむこともないのです
あたたかかったつめつめたくなるばかり
そのおおきなからだかたちづくっていた細胞さいぼうのひとつひとつが
いますべてにたえようとしていたのでした
ネコくんはだまってすなにまみれたおおきななきがらのそばにちつくしました
たった1にちでもかれがいっしょにすごしたともだちのからだ
まもなくくちはててほねとなり、もとの姿すがたをとどめなくなってしまうのは
たまらなくかなしくつらいことでした
ネコくんはクジラさんのからだをほんのすこしかじりとりました
なみだ塩水しおみずとでにがくしょっぱいあじがしました




水平線すいへいせんにひとすじのまぶしいしんじゅいろひかりえてきました
それはにふくれあがり、よるのやみをいはらっていきました
そらいろふかいぐんじょういろからむらさき、あか、そしてひるなれたあおへと
こくこくとうつりかわっていくパノラマがくりひろげられました
そのとき、ネコくんはたのです
うみからおおきなおおきなクジラがたか
へまいがり
そのままどんどん天高てんたかくのぼっていくのを
まきちらされたみずが、かおしたばかりの朝日あさひびて
キラキラと虹色にじいろにかがやき、クジラのからだつつみました
そのたとえようのないうつくしさはネコくんのにやきついて
一生忘いっしょうわすれることはないでしょう
あたりがすっかりあかるくなったころ、
クジラはそらのかなたへえていきました

クジラさんのからだは たくさんのきものたちをつちかうために
つちにかえり、うみにかえっていきます
その一部いちぶは ネコくんのからだ一部いちぶにもなりました
それではいったい、クジラさんのたましいは
どこへったのでしょう?
うみよりももっとひろくてふかそらこうの世界せかい
旅立たびだっていったのでしょうか?
あるいはもしかしたら、こおりかぶはるかみなみのクジラたちの楽園らくえん
そらから仲間なかまたちのしあわせそうな姿すがたをながめているのかもしれません
でも、ほんとうのところはネコくんにもわかりません..





なんとかぶじにみかのまちへもどったネコくんは
それからというもの
缶詰かんづめのごはんばかりべるのをやめて
なるべく自分じぶんちからでえものをとらえるようにしました
なにしろネコくんにはつめきばという
ネコのかみさまからさずかったりっぱなりの道具どうぐがあるのですから
それでもかれはときどき
いつかもう一度いちど、クジラさんたちにいにきたいとおもうのです
でも、それはクジラをべたいからではなくて
ごうかいなジャンプをせてもらったり
きれいな歌声うたごえみみをすませたいからです
そして、またいろんなおはなしかせてもらえたらなあとおもうのです

<おしまい>


Dirty Fishing" Emptying Oceans 



          


鯨類は約5000万年前海から陸に上がり、約3000万年前また海に戻り今の姿に形成した気の遠くなるような進化を遂げ今日まで生きてきたという。人類の歴史は40〜50万年と鯨の足元にも及ばない。
鯨類は何千万年もの間海で生活をして来た先住民であり生きた化石だ。
人間が陸で生活をしているのと同じで、海は海で生活をする生物の場。
そこには人と同じように家族の営み、教育、喜びや悲しみのドラマがあるのだがそれが見えないのは商品や食肉としか考えていないからだ。
幸い数年ごとに動物や自然を人間の手によって壊すべきではないと気付く人々が増えてきた。
野生動物は人間の資源ではなく自然環境をと共に守っていくものだ。
増えすぎたから間引くとか、魚を大量に食べるから漁業に差し支えると言うのはそれは人間のエゴである。
自然は自然の力で保たれていく、増え過ぎれば自然に減る。それは世の中に人間が現れるずっと以前から行われてきた。
鯨が海で魚を食べることは当たり前であり、人間は鯨から海の幸を分けてもらうという形こそが地球に住む生物の形だと思う。


鯨もイルカも人間と同じように長生きもしたい、生涯を全うしたいと思っている。
それはどんな生き物もそうだ。
人間が動物の命を奪い大切に感謝しながら食べようが骨や皮を無駄なく使おうが、それで許されると思うのは人間の自己満足である。どっちにしろ殺される事には変わりない。
殺される生き物は人間に食べて欲しくて生まれてきたわけではない。出来るなら生まれた場所で必死に生きて死にたいと思っているはずだ。
動物の命を糧として生きる人々は反論する際に必ず、"では家畜の命は奪っていいのか?"と聞いてくる。
出来れば殺すことはしたくはない。しかし家畜はどこで生まれるのか?
それは人間が育て増やしている動物なのだから人間が責任を持ちどうするべきかという問題は人間の手中にある。
家畜を殺して食べるのなら、せめて生まれてから死ぬまでの間自由に幸せに育て、死ぬときは恐怖や苦しみを与えない事が人間の家畜への責任である。
では中国韓国の犬や猫食はどうかと言うとこれらの動物は家畜として生まれたわけではない。遠い昔人間と共存するために人の手で作られたペットである。本来なら人を助けながら生きる動物だが現在はほとんど愛玩動物である。だからこれも食べたり増えすぎたから殺すべきではない。人間の作った生き物なのだから人間が保護する責任がある。
しかし野生生物は人間の手中にはない。彼等は自然の中で生きるように生まれてきた。自然の中で共存していない人間にとっては国境の向こうの生き物たちでなのである。

日本の人々は"クジラ肉は食文化である"、"肉食はどこの国にもあり、日本はたまたま鯨も食していたから"と理由にする。
それを妨害しようとする者は、"水銀が多量に含まれる"、"絶滅機種である"などお互いに様々な理由をつけて譲り合うことはない。
アメリカでは太地が漁をする度にニュースで報道される。
学校では環境保護、自然保護、動物保護の教育にザ・コーブを上映し生徒たちが日本は捕鯨国である事を知る。
親達は鯨の神秘的な美しさを子供達に教える。
今世界中の人々があの小さな漁村の太地を注目しているのだ。
誰が、どっちが野蛮だなどと言うことは全く意味がない。
日本はテクノロジーなどでは先進国だが、自然や動物保護への考え方についてはとても遅れをとっている。
動物が下等なもの、人間のために全てが存在するという誤った意識を持っている人々がまだ多い。
アナログからデジタル、ガソリンから電気へと時代が変わる様に、食文化も変わるべきである。
現在は遠い昔の狩猟時代ではないのだから、狩をして生きるのはわずかに残る狩猟民族だけで十分である。


     〜ケイコ・オールズ〜




































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